W杯の2か月前にハリルホジッチ監督を解任したことは絶対に許せないことですが、さらにその後任監督に西野氏を据えたことも、全くもって理解しがたいです。
西野氏は、ハリルホジッチを評価・サポートする技術委員長という役職に就いていました。
代表強化の最高責任者です。
W杯の2か月前という誰が見てもおかしい時期に代表監督を解任する以上、彼も責任を取って辞めるべきでした。
そもそも、ハリル監督を解任する以上、その後任にちゃんとした監督を選定した上で解任するべきです。
特に、W杯の2か月前という切羽詰まった時期に解任するわけですから、後任にちゃんとした監督がいなければ、アフリカや中東の衝動的な監督解任→W杯で惨敗、という歴史をなぞるだけなのは、西野技術委員長も理解していたはずでしょう。

それが、まともな監督を呼ぶこともできずに、消去法で自分が監督になるというのは、技術委員長として『やるべき仕事をしてない、やるべき仕事をこなすだけの能力が備わっていない』としか言いようがありません。
もし、田嶋会長から西野氏に「後任監督になってくれ」と言われたとしても、それを断って、「こういう良い監督がいますから、後任は彼/彼女にしましょう!」と言うのが技術委員長の仕事だと思います。

しかし、彼には、別の監督を連れてくる才覚がありませんでした。
おそらく、手倉森氏か自分かの2択しか無かったのでしょう。
それでは、技術委員長として、あまりに能力が無さすぎます。
様々な監督やその代理人とのツテを作っておき、いざと言う時にそれを活用するのが技術委員長の役割であって、レポートを作ってのほほんとJFAビルに座っているのが技術委員長の役割ではありません。
2016年3月に技術委員長に就任しましたが、それからの丸2年間、何をやっていたのでしょうか?

ここ1~2年の報道を考えると、田嶋会長がハリル監督を招聘した原氏と霜田氏を追放してからずっと、田嶋会長や西野技術委員長はハリル監督の能力に疑念を持っていたように思います。
表面的には擁護する発言をしますが、その実、「この監督、大丈夫だろうか?」と思っている様子がありあり。
まぁ、田嶋会長は、原さんと霜田さんを政敵とみなしていて大嫌いでしたから、その2人が連れてきた代表監督を信頼するはずもありませんが。

そうであるなら、西野技術委員長はリスク管理として、別の監督に声をかけておくべきでした。
私なら、現在フリーで、かつ2014年のブラジルW杯でアメリカ代表をベスト16に導いたクリンスマン監督に声を掛けておきます。
クリンスマン監督は、2006年にもドイツ代表をW杯3位に導いたことがあり、代表指導経験の豊富な監督です。
戦術的には、攻守のバランスを取るタイプで、攻撃的すぎることもなく、守備的すぎることもありません。
フィジカルや足元の技術のどちらかを重視するタイプでもなく、非常にバランスの良い指揮をします。
ドイツ人であり、ブンデスリーガに所属する選手が多い日本代表には合いやすいと思います。
また、英語も話せるため、コミュニケーションの齟齬も比較的発生しにくいでしょう。
戦術家というよりは、どちらかと言うとモチベーター型の監督です。
短期間、日本代表を任せるのなら、これほどうってつけの監督も少ないと思います。

もし、西野技術委員長がクリンスマンのような監督に事前に声を掛けていたなら、ハリルホジッチ監督を解任した後に、評価&サポートする側である自分が後任監督になる、というような愚を犯さずに済んだことでしょう。

西野監督の最大の問題は、W杯で代表を率いたことが無い点です。
これまでの日本代表監督を見れば分かりますが、好成績を収めたのは、それまでにW杯で指揮をしたことがある監督のみです。

■初めてW杯を率いた監督
岡田監督(1回目)→グループステージ敗退
ジーコ監督    →グループステージ敗退
ザッケローニ監督 →グループステージ敗退

■日本代表を率いる以前にW杯経験のある監督
トルシエ監督   →W杯ベスト16
岡田監督(2回目)→W杯ベスト16

これはおそらく、偶然ではありません。
W杯本大会は短期決戦であり、途中からの立て直しが非常に難しい。
だからこそ、大会への"入り方"が非常に重要です。
そこに、過去にW杯を戦った経験やノウハウがモノを言うのだと思います。

また、西野監督についてはガンバ時代の印象が強い方が多いでしょうが、彼が"代表"監督としてふさわしいかどうかを考えるなら、直近の神戸時代・名古屋時代を振り返ることの方が大切です。

例えば、ヴィッセル神戸では、2012年5月に和田監督の後を継いで監督に就任しました。
そして、11月まで神戸を率いましたが、チームを立て直すことができずに解任。
神戸は、そのままJ2に降格しました。

このことで分かるのは、西野監督は短期で結果を出せる監督では無いということです。
ガンバのようにじっくりと時間があればともかく、短期でチームを立て直すのは不得意だと言えます。

その後、2014年に名古屋グランパスの監督に就任しました。
2014年:10位
2015年:9位
と中位に落ち着き、パッとしない成績で契約満了を迎えて退任。
このとき、特に目立っていたのが闘莉王を上手く扱えていなかったことでした。
闘莉王は、守備面で衰えが顕著でした。
その上、自分のミスで失点したときでさえ、他の選手を叱り飛ばすというわがまま放題。
にも関わらず、西野監督は彼を外しません。
さらに、闘莉王はCBなのに勝手に最前線に出て攻撃に絡むプレーをしていました。
ですが、それも黙認していました。
その結果、戦術面で穴がたくさんできてしまい、このときの名古屋は個の力だけで戦っている感が非常に強かったです。
いまのハリルジャパンなんか目じゃないくらいに。
翌年(2016年)、名古屋を小倉監督が率いてJ2に落としてしまうわけですが、その遠因を作ったのは間違いなく、西野監督だったと思います。
西野監督が、ここまでチームの戦術面をかき回してなかったら、名古屋がJ2に落ちることもなかった可能性が高いです。

名古屋時代に分かったことは、西野監督は強烈な個性を持つ選手を制御できない、ということです。
例えば、オシム監督は代表で闘莉王をコントロールできていました。
アジアカップに向けてオシムが闘莉王を招集した時、闘莉王はケガを隠して代表に参加しました。
ジーコジャパン時代に代表に呼ばれず、闘莉王はずっとくやしい思いをしていたからです。
が、それをオシム監督は即座に見抜き、「それは、お前のわがままだ。ケガを隠して負けたら、どう責任を取る気だ。ちゃんとケガを治してから代表に参加しろ」と説教して、代表から追い返したことは有名です。

本田圭佑は、闘莉王に負けず劣らず強烈な個性を持つ選手です。
西野監督は、彼を本当にコントロールできるのでしょうか?
自分の考えた戦術通りのプレーをさせることができるのか。
また、本田の調子が悪かったり、戦術的な問題で、ベンチに座らせることができるのでしょうか?
名古屋時代を見ていた私からすると、西野監督にそのようなことが出来るとは思えません。
チームの空気が悪くなるのを恐れて、本田に毅然とした態度を取れないのではないか、と危惧します。

また、西野監督は、ガンバ時代に華々しい成績を上げましたが、そこにも大きな問題がありました。

①守備組織を作るのが苦手で、そもそも守備練習をほとんどさせない。
②得点を取るのは、外国人FW任せ。

①については、コアなガンバサポーター(練習場をよく見に行くようなサポーター)複数人から聞いた話なので、確実です。
ACLで優勝した時でさえ、ほとんど守備練習は無し。
結構良い守備をしていたと思っていたのですが、それは選手自身の才能と個人練習でまかなっていたようです。
それでよくACLやリーグで優勝したよね、という驚きはあります。
ですが、それはアジアだからできたことであって、W杯出場の32カ国の中で日本は下位に属します。
守備が適当で勝ち上がれるほど、強い国ではありません。

②についても、非常に心配です。
ガンバはスカウトが優秀で、良い外国人FWを取ってくることで有名でした。
アラウージョ、マグノ・アウベス、フェルナンジーニョ、ルーカス、レアンドロ。
日本人がパスを回して、外国人FWが点を取る。
それが、西野ガンバの勝利の方程式だったと思います。

ですが、2010年頃からだんだんと良い外国人FWが取れなくなってきて、ガンバは下降線をたどります。
もちろん、明神、二川、橋本らの中心MFが衰えてきたにもかかわらず、新戦力を育てられなかったこともありますが、外国人FWの質の低下も大きな影響があったと思います。
その結果、2011年に西野監督はガンバを退任しました。

私には、西野氏が日本代表を率いるには、力不足のように見えます。
特に、短期でチームを立て直すことが不得意ですから、よけいにです。
田嶋会長と西野氏は、判断を間違ったと思います。
まだ、手倉森氏の方が良かったのではないでしょうか。
ハリルを解任した首謀者はスポンサーだった、という陰謀説がまことしやかに流れていますが、おそらく、それは違うと思います。
ただ、日本サッカー協会(JFA)単独での判断だったとも思いません。
結果的に、JFAとスポンサー(おそらくKIRIN)が同じ考えに至ったのでしょう。
彼らは、”第二のカズ外し”を恐れて、ハリルホジッチ監督を解任したのだと思います。

1998年フランスW杯において、当時の岡田監督はカズ(三浦知良)を合宿地のスイスにまで連れて行っておきながら、W杯メンバーから外しました。
当時、日本サッカー界のエースでありアイコン(象徴)であったカズをW杯メンバーから外した影響は、非常に大きかったです。
いまだに、岡田監督はカズをW杯に出場させるべきだった、という意見の人が数多くいます。

私から見ると、当時のカズは既に衰えていて(もしくは調子を落としていて)、W杯での活躍は難しいと思っていたので、岡田監督がカズを外したことは適切な判断だと思っていました。
ですが、やはり、日本サッカー界のアイコン。
彼を外したことは、ものすごく色々な人を傷つけました。
それはファンやサポーターだけでなく、当時のJFAやスポンサーを含めてです。
だからこそ、いまだに「カズをフランスW杯に出場させるべきだった」と仰る人が多いのだと思います。

ですが、それほど、当時のいろいろな人を傷つけたのは、単にカズが外れたことだけが原因ではありません。
エースでありアイコンであるカズを外した第一次岡田ジャパンは、フランスW杯で3戦全敗。
グループステージ4位の惨敗で、W杯を去りました。
ですから、

「だから、カズを入れておけば、、、、、
 カズがいれば、グループステージを突破できた可能性は十分ある。
 仮にそれが難しくても、少なくともジャマイカには勝てたはずだよ!」

もしくは、

「どうせ負けるんだったら、それまで日本サッカーを引っ張ってきたカズを連れて行けよ!」

というようなことを思った人が、とても多かったようです。
私の知る限り、『カズを出場させるべきだった派』の大半は、どちらかの意見をお持ちでした。
私のように、
「結果的に全敗だったけど、少しでも勝つ確率を上げるためには、調子の悪いカズを外すのは止むをなかった」
みたいな意見の人はほとんどいません。

しかし、もし第一次岡田ジャパンがグループステージを突破していたら、どうでしょうか?
カズを外したことが、ここまでJFAやスポンサーやファンやサポーターの心を傷つけることは無かったのではないかと思います。
「岡田監督はやむを得ずカズを外したけど、その判断は正しかった。」
そう賞賛されたことでしょう。

ですが、そうはなりませんでした。
3戦全敗です。
だからこそ、JFAやスポンサーに所属した人たちの多くは、カズ外しに対して、身を切るような後悔の念を持っているのだと思います。
特に、いま、JFAやスポンサーの中心にいる人たちは、当時、30代~40代前半の人がほとんどです。
カズが日本サッカーを長く引っ張ってきたことを良く知っており、ドーハの悲劇も目の当たりにした年齢の人たちばかりでした。
ですから、自分たちが偉くなったとき、同じことを繰り返すのは絶対に嫌だ、と思ったことでしょう。

今回のハリル監督を巡る状況は、JFAとスポンサーに1998年の時のことを思い出させたに違いありません。
当時のカズに当たる今の選手は、もちろん、香川と本田(おそらく岡崎は入りません)です。

私が言うまでもなく、2人は代表と欧州のクラブシーンの両方で活躍することで、長く日本サッカーのアイコン(象徴)として君臨してきました。
昨季のJ1のリーグ優勝チームは知らない一般の方でも、香川と本田を知っている人は非常に多いと思います。

しかし、ハリル監督は香川と本田を重用しません。
彼ら2人が得意な戦術も採用する訳でも無ければ、起用の仕方も、非常に微妙。
中心選手という扱いでは無く、その他大勢の選手たちと同じフラットな扱いです。
全選手をとても公平な競争状態におき、日本代表というチーム(グループ)の全体最適を計ろうとしたとても健全な考え方だと思うのですが、一方で、彼らが日本サッカーのアイコン(象徴)である事は、無視した起用の仕方です。

ハリルは、彼ら2人をW杯本大会に招集するかどうかも怪しい上(選手の調子やチームへのフィット具合次第)、もし招集してもレギュラーで使うかどうか、非常に疑問な状況でした。
ハリルは、日本サッカーのアイコンである香川と本田をそのように扱ったのです。

そして、日本サッカーのアイコンをそのように扱う以上、その代わりとして、JFAとスポンサーは『ハリルジャパンには、圧倒的に強くあって欲しい』と思ったことでしょう。
ハリルジャパンには、強化試合であってもきっちり勝利し、誰にでも分かるような充実した内容を見せて欲しい。
ザックジャパンのように。
そうであれば、W杯本大会で勝てる期待が持てる。
それなら、アイコン2人を重用せずにフラットに扱うことも許容できるし、最終的にW杯に呼ばなくても納得できる。

「カズを外した上に、W杯で惨敗した時のようなことは、繰り返したくない。
 もう、自分が傷つくのも、ファンやサポーターを傷つけるのも嫌なんだ!」

JFAやスポンサーは、きっとそう思ったのでしょうね。
だからこそ、彼らはハリルを解任したのでしょう。

ハリルと一部の代表選手とのコミュニケーションに齟齬があり、また、ハリルが唱えるサッカーに付いていけない選手が多かったのも事実でしょう。
その結果、強化試合では、結果も(一見)内容もかんばしくない。

ですが、私は、ハリルはここからの2か月でチームを仕上げるタイプの監督だと思っていたし、これまでの内容も細部をつぶさに見れば、かなり期待できる部分も多々あったと思います。
「縦に速く」とか「デュエル」等といったキーワードばかりがスポーツ紙で踊っていますが、ハリルサッカーにとってそれらは全体の一部であって、本質でも何でもありません。
日本サッカーではそういうことを言う監督はほとんどおらず、単に物珍しいから、マスコミがそういうキーワードを取り上げているだけで、そういった処に拘泥していると、ハリルサッカーの本質は理解し切れないでしょう。
そして、どんなプロの仕事も、本質は細部に宿ります。
その細部を理解することは、ほんの一部の人にしかできない。

ですから、JFAもスポンサーも、その細部を理解できなかったのだと思います。
特に、西野前技術委員長は、監督時代から守備への造詣は浅く、かつガラパゴス化したサッカーが得意な方でした。
外国語も話せないため、たびたび欧州に渡って世界の最新情報を集めるわけでもない。
もちろん、欧州にコネもない。
だから、世界最先端のサッカー事情を把握することもできない。
それは、神戸時代や名古屋時代のサッカーを見ても明らかです。
彼は、サークルディフェンスや5ライン理論といった欧州最先端(と言うか、既にこれも古びつつあるけど)の戦術論を理解しているのでしょうか?
欧州では、監督は『守備しやすい攻撃、攻撃しやすい守備』をどう構築するかが、チームの実力を大きく左右する時代になっています。
その時代に乗り遅れた象徴的な監督が、ベンゲル監督です。
だからこそ、アーセナルは、少なくともリーグ戦ではCL出場権を2年連続で逃す事態になっているのです(まだELに優勝してCL出場権を確保する可能性はありますが)。

結局、JFAもスポンサーもハリルサッカーを理解できず、だからこそ、単なる強化試合で「自分たちにも理解できる分かりやすい結果と内容」を求めた。
ですが、日本人選手たちの現在の実力では、ハリルはそんな「分かりやすい結果と内容」を提供することが出来ませんでした。
いや、ハリルは単なる強化試合で「分かりやすい結果と内容」を提供することが、W杯本大会でマイナスになるとさえ思っていたはずです。
ザッケローニ監督は、強化試合で「分かりやすい結果と内容」を提供してしまったために、戦術を分析されまくって負けたというのにね。

いずれにしろ、20年前の「カズ外し」をいまだに感情的に引きずっているようなJFAとスポンサーでは、日本代表がW杯で勝てるはずもありません。
当時と比べ、サッカーの戦術は大きく変わってしまいましたし、さらには情報収集・分析力は格段に上がりました。
ボードに駒を配置して戦術を説明するような静的な戦術指南は、もう欧州最先端では時代遅れになっており、動画での動的な戦術分析と戦術指南が当たり前になっています。

哀しいかな、JFAとスポンサーは、最新のサッカーを理解できず、もう20年前のことになる「カズ外し」に心を囚われてハリルを解任したのだろうと思います。
そのような体たらくでは、W杯でグループステージを突破することは、至難の業でしょう。

日本代表のマリ戦から1日が過ぎて、様々な日本人解説者から色んな論評が出てきていますが、結構、さみしい分析が多いです。
この試合、日本代表が良くなかったこと自体は私も賛成なのですが、その分析がちょっと、、、、
特に、元鹿島アントラーズの岩政氏の評論にはガッカリしてしまいました。

『【岩政大樹】攻守ともにぶつ切りのハリルジャパンは”同じ画”を描けていない』
http://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=37657

この記事は、素直すぎる内容となっています。
マリーシアを知らない日本人ならでは、という感じです。
岩政は、Jリーグでは屈指のCBだったかもしれませんが、W杯本大会でプレーした経験がないからでしょうか、、、?

W杯本大会では、『相手の長所を出させないようにしながら、相手の弱点を突く』という戦いが基本です。
自らの長所を出すことも重要ですが、それは相手との相対関係を考えながら出すものです。
それが心の底から分かっていたら、

> 傾向としてあったのは、立ち上がりの成功体験もあってか、チームの方針もあってか、センターバックからの長いボールで相手の背後やサイドをつく攻撃でした。
>しかし、長いボールというのは相手も間延びする代わりに味方も間延びします。それぞれの距離感が遠くなるので、身体能力の差がモロに見える展開になってしまいました。


というような記事は、書かないと思うんですよね。

戦術的に考えた場合、日本もマリも両方ともがコンパクトな陣形を取った場合、有利なのはマリです。
なぜなら、密集地帯では、身体が大きい方が有利だからです。
足元の巧いチームが、フィジカルごりごりのチームに対して、ボールを保持して攻めまくっても点を取れないケースはよく見ますよね。
そして、カウンターで沈む。

身体が大きくてパワーに優れた壁が並ぶと、対戦相手に足元がいくらあっても、クイックネスがいくら優れていても、スペースが無さすぎてそれを生かせません。
ですから、ハリルジャパンは、日本はコンパクトさを保ちつつ、マリを間延びさせようとする戦術を採用しました。
それが、最終ラインからのロングボールです(ただし、放り込みではない)。

序盤はコンパクトだったマリの陣形も、このロングボールで間延びしていきます。

ですが、相手を間延びさせることを狙っていたのは、日本だけではありません。
マリも、日本を間延びさせようと狙っていました。
フィジカルを生かしてボールを奪うと、すぐに長めのボールを出して、日本代表の裏を狙ってきています。
その結果、序盤はコンパクトだった日本代表が少しずつルーズになっていきます。

結局、前半20分以降は、お互いの策が奏功して、両チームともコンパクトさが失われた戦いになりました。
このように、日本がいくらコンパクトさを保ちたいと思っても、対戦相手はそう簡単には許してくれません。

2014ブラジルW杯のスペイン代表を思い出して欲しいと思います。
2008年ユーロ、2010年W杯、2012年ユーロの3大会に連続優勝したスペイン代表は、2014年ブラジルW杯でも優勝候補の本命と見られていました。
ですが、グループステージの初戦で対戦したオランダ代表は、スペイン代表のコンパクトな陣形を間延びさせるために、徹底した裏狙いとロングボールを活用。
これにより、スペイン代表はコンパクトさを維持することができずに、前半終了間際から崩れ始め、最終的には1-5という大差でオランダ代表に負けを喫しました。
この大会、スペインの勝ち疲れによるメンタルの喪失や、フィジカルコンディションのマネージメントの失敗を指摘する解説者が多くいましたが(それらも正しい指摘の1つでしょう)、私には、対戦相手が必死にスペインの長所を消しに来たところ、その作戦が上手くハマった、という面が大きかったように見えました。

以上のように、W杯は対戦相手が存在する戦いである以上、日本代表の長所がいつも出せるとは限りません。
日本人解説者のみなさんには、そういう処を踏まえた上で解説をお願いしたいなぁ、と思います。
残念な試合でしたね。
マリ代表は、数人の中心選手がケガで出場できず、さらに2022年W杯を狙う若手選手中心の構成だという報道を見ていましたので、少し甘く見ていたのですが、どうしてどうして、かなり厄介なチームだったと思います。
仮想セネガルとしては、非常に良い強化になったんじゃないでしょうか。

この試合を見て、私は2008年北京五輪のナイジェリア戦を思い出しました。
本田圭佑や香川、岡崎、内田らが出場したあの試合(ちなみに、長友はベンチでした)、結果は2-1と僅差でしたが、内容的にはナイジェリアの個のフィジカルとスピードに翻弄され、ほぼ完敗。

あれから10年。
また、同じような試合に出くわしてしまい、あまり日本サッカーは成長していないんだなぁ、という想いを深くしましたね。
この試合、デュエルで互角に戦えていたのは大迫と中島翔哉くらいのもので、他の選手は一様に負けていました。
欧州で戦っている長谷部・長友・久保裕也・宇佐美もかなりデュエルでは負けていましたし、本田も分が悪かったと思います。
特に、衰え始めているとは言え、長友があそこまでデュエルで負けるのは、かなり珍しいです。
欧州組がこの状態ですから、Jリーガーたちは言うに及ばず。

少しデュエルで負ける程度であれば、戦術や戦略でカバーできることも多いと思いますが、ここまでデュエルで負けると、ぶっちゃけどんな戦術でもカバーできません。
ルーズボールはマリの選手にキープされることが圧倒的に多かったですし、日本がキープしかけたボールもマリの選手の足が伸びてきて奪われていました。
守備では、日本が2人でプレスを掛けてもボールを奪えず、時には日本の守備者が3人いたのに突破されることもありました。
攻撃でも、相手に当たられるとフィジカル負けしてパス精度を落とされていましたし、遠い間合いから足を出してくるので、通ると思われたパスをインターセプトされていました。
テレビ(地上波)では、解説の松木氏や中山ゴンが「早くアフリカの特徴に慣れないと」みたいなことを言っていましたが、試合終盤になっても、それほど慣れることはできなかったです。

この試合、日本が比較的優勢だったのは、前半20分まで。
後半ロスタイムに、素早くボールを動かして中島翔哉がゴールを決めて1-1で引き分けましたが、もし負けていたら完敗に近かったでしょうね。

そうは言っても、良いプレーをした選手もいました。
それは、GKの中村航輔、そして大迫と中島翔哉です。
中村は、前半8分、左SB長友と左CBの槙野を振り切ったマリの選手がフリーに近い形で打ったシュートを止めました。
長友も多少は寄せていてシュートコースはある程度限定されていたものの、かなり速くて強いシュートで、GKをパワーで押し切る意図を感じました。
もちろん、W杯に出てくる国のGKレベルであれば、このシュートは止めて当然ではあるのですが、Jリーグレベルでは危険なシュートだと思います。
中村は、このシュートストップで、自分がW杯に出る資格のあるGKであることを証明できたのではないでしょうか。

そして、大迫は素晴らしかったですね。
ポストプレーでの強さと高さ、さらにボールを落とす精度が抜群でした。
自らシュートを打つ場面は少なかったですが、ポストプレー型の1トップ(ベンゼマ等)は自分でシュートを打つよりも他の選手を生かすことの方が重要なので、特に問題はないと思います。
ハイボールもグラウンダーのボールも収めるポストプレーができて、ゴールもどんどん決める、なんて万能FWは、欧州でもディエゴ・コスタとハリー・ケインくらいしか思いつきません。
ですから、大迫はシュート数が少なくても、良いと思っています。

中島翔哉は、クラブの調子の良さをそのまま代表にも持ち込んでいましたね。
フィジカルで優位に立つマリの選手をドリブルで翻弄しました。
バチンと当たれば、中島のフィジカルでは吹っ飛ばされるでしょうが、ドリブルで的を絞らせなかったために、デュエルでも優位に立っていたと思います。
デュエルは、フィジカルとフィジカルの競り合いだけではないというところを見せてくれました。

少なくとも、この3人はW杯に行く23名に入ることは確実でしょう。

特に、中島翔哉を発掘できたことは、W杯本大会に向けて非常に大きなことだと思います。
中島は得点に絡む能力を高く評価されていますが、それよりも、ドリブルでのキープ力の方が、日本代表では重要なのではないでしょうか。
私は、欧州とJリーグで特に大きな差があるのは、キープ力だと思っています(攻撃面では)。
1人でキープする力があれば、もし押し込まれても、カウンターでチャンスを作ることができます。
従来は、ボールをキープするのは本田しかできませんでしたが、本田は足が遅いので、カウンターはやりづらかったです。
ですが、これからは中島を起用することで、カウンターを発揮しやすくなるのは大きなメリットです。

逆に、宇佐美は非常に危うい立場に追い込まれましたね。

マリ戦では、組織力や連携といった面を深めることはできませんでしたが、最後まで選手たちを競い合わせて、良い状態の選手を選ぶ、という面だったり、アフリカのチームと対戦するという経験を積んだ、という意味では、結構良い強化試合になったと思います。
従来の日本代表(特にザックジャパン)や、Jリーグ(特に川崎Fや浦和レッズ等)を見てきた日本人ファンの多くは、パスサッカーや組織力・連携をそれほど重視しないハリルホジッチ監督のやり方に馴染めないようです。
「ハリルサッカーは、日本に合わない」と仰るファンをよく見ます。

ですが、私はハリルホジッチ監督に期待しています。
デュエルにある程度勝たずして、いくらパスサッカーを極めても、組織力・連携力を上げても、限界があるからです。
日本サッカーが強くなるためには、長所を伸ばすことだけでなく、同時に短所も改善する必要があると思います。
ハリルホジッチ監督は、日本代表で初めてそれに挑戦してくれている監督ですし、実際、それが良い方向に向きつつあるとも言えます。
もし、これで日本がW杯ベスト16まで行けたなら、日本サッカーの成長に一石を投じることになるんじゃないでしょうか。
W杯イヤーの3月の日本代表戦と言うと、従来のイメージではチームの連携と組織的戦術の煮詰めに入っていく時期です。
実際、2002年のトルシエ監督以降、ほとんどの日本代表監督は、3月の代表戦をそういう使い方をしていました。

※第二次岡田ジャパンは、その後、5月に入って一か八かの戦術大変更という賭けを行うのですが、それはまた別のお話。

が、ハリルホジッチ監督は、「いやいや、まだまだ選手選考のために強化試合を使うもんね」とばかりに、実験的な選手選考を行っています。
その象徴が、中島翔哉の初召集。
ぶっちゃけ、この時期にベテランではなく、若手を初召集するのはハリルホジッチならでは。
アルジェリア代表を率いていたとき、3月に突然マフレズ(現レスター、当時はフランス2部に所属)を初召集したのと同じようなイメージです。

こういう処を見ると、つくづくハリルホジッチは、モウリーニョに似てるなぁ、と思うのです。

むかしから日本サッカーでは『連携』という名の「あ・うん」の呼吸を大事にします。
日本のスポーツは「チームプレー」が物凄く重要で、それはサッカーも例外ではありません。
これは日本社会の文化のようなもので、突出した個の力を育てたり、その個の力を生かすことよりも、無意識にチームで戦うことの方が重要だと考えている人が大半を占めるからです。

ですから、日本サッカーは、代表に限らず「あ・うん」の呼吸で上手く連携できるまで、組織力を磨きます。
組織力を重視しすぎて個の力をスポイルすることがあっても、それでも組織力を優先するのが日本サッカー。
出る杭を打つのが、日本サッカーなのだと思います。

しかし、ハリルホジッチ監督(やモウリーニョ監督)は違います。
戦術的な監督だけあって、組織力は軽視していません。
ですが、それと同時に個の力も非常に重視します。

その結果、組織力は磨いても、個の力をスポイルしないギリギリのレベルまでです。
個を生かしてこその組織であって、個を殺して組織力を上げる組織は、意味が無いと考えているのだと思います。

ですから、ハリル(やモウリーニョ)の組織は、細かい処までを全て組織で対応しきるということはありません。
細かい処は個の力(判断力含む)で何とかしろ、というのがハリルなのです。

だからこそ、ハリルは、それまでほとんどやったことのないフォーメーションを多用します。
2014年ブラジルW杯ではアルジェリア代表を率いて、4つのフォーメーションを使い分けたと言われています。

ベルギー戦:4-3-3
韓国戦   :5-4-1
ロシア戦 :4-2-3-1
ドイツ戦 :5-1-3-1

当然、選手たちは「あ・うん」の呼吸で連携できるレベルまで、これらのフォーメーションに習熟しているわけではありません。
ですが、相手の特徴を考えた場合、これらの各フォーメーションが対戦相手に一番効くだろう、と考えて採用しているのです。

つまり、良い意味で組織力は「そこそこ」のチームを作るのがハリルホジッチ監督なのだと思います。
だからこそ、個の力が生きる。

モウリーニョも、試合途中でリンガード(攻撃的MF)を右SBにポジションを変更させたり(とても効果的でした)、組織力を「あ・うん」レベルまでは磨かない監督。
でも、だからこそ、柔軟な戦術変更で対戦相手ごとの作戦を完遂できるのだと思います。

■追記
以前の記事『敵を欺くには、まず味方(日本国内)から。ハリルホジッチがもくろむ情報戦。』に書いたように、この3月の代表戦では、本田・香川・岡崎の3人を呼ばない可能性があると思っていました。

結果的には、本田は招集しましたが、香川と岡崎は未招集。
香川はケガも原因の1つですが、浦和DFの遠藤航がケガをしても日本から遠征先のベルギーへ帯同させているのに、ベルギーと隣国のドイツにいる香川はケガでもベルギーに帯同させない。
ケガというよりも意図的に香川を外した、と考えた方が良いと思います。

ですが、香川や岡崎、さらには乾を外したのは、ハリルがマスコミに話したように「得点力のある選手を優先した」わけではないと思います。
代表監督が、招集しない理由を正直に言うわけがない。
私が代表監督なら、本当の理由を隠すために、もっともらしい嘘をつくでしょう。

ハリルは、新しく招集した選手にチャンスを与えて競争力を向上させるとともに、W杯の対戦相手に情報戦を仕掛けたのだと思います。
本番直前まで手の内を隠し、日本対策を立てにくくする、という別の狙いがあったのでしょう。

私は、W杯の23名には、おそらく香川と乾と本田は選ばれると思います。
岡崎は微妙ですが、それでも選ばれる可能性は十分あるでしょう。

中島翔哉や森岡、宇佐美に注目していたW杯の対戦相手は、混乱すること間違いなし。
ハリルホジッチ監督は、なかなかの策士だと思いますね。