fc2ブログ
最近、いくつか青春系ライトノベルを読んだのですが(「弱キャラ友崎くん」もその1つ)、結構、ショックを受けました。
ほとんどの作品が、「俺ガイル(やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。)」の影響をかなり受けているのです。
異世界系のラノベは読んでないので分かりませんが、青春系はほぼだいたい影響を受けていると言っていいでしょう。
え、なんで?
確かに俺ガイルはおもしろいけど、そこまで影響受けるもん?

個人的に、どういうところに影響を感じるかと言うと、

①”スクールカースト”のことが出てくる。
②何か問題が発生したら、主人公(男子)が”ななめ上解決(奇抜なアイデアでの解決)”をする
③生徒会選挙が出てくる
④スーパーな能力を持つ高飛車な美少女が、ヒロインかサブヒロインになる

といった点です。

特に①は顕著で、むかしのラノベである「とらドラ!」や「僕は友達が少ない」には、クラスになじめないキャラクターは出てきましたが、明確にスクールカーストに言及することはありませんでした。
たぶん、ラノベで初めてストーリーのど真ん中に”スクールカースト”を持ってきたのは「俺ガイル」で、その新規性がこの作品をオンリーワンにしたと同時に、若い読者の心を掴む一因になったのだと思います。

ですが、その後の青春系ラノベは”スクールカースト”が必ず出てきて食傷気味。
確かに学生にとって”スクールカースト”は非常に気になる問題なのですが(対応を間違えると、学校生活が不快なものになる)、それに青春系ラノベで必ず言及する必要はないと思うのです。
当然ですが、一般の青春小説においては、スクールカーストには言及しないものが大半です。
なぜ青春系ラノベだけが、こうもスクールカーストに言及したがるのか。
たぶん、その方が読者のウケが良いと思っているからでしょう、作者が。

でも、それは安易だと思うのです。
スクールカーストの描き方については、俺ガイルは最初の突破口を開いたと同時に、その危うさやそれを気にする無意味さも描ききっていて、とてもレベルの高い純文学に近い作品になっていました。
それに追随した他の作品が、俺ガイルを凌駕するレベルでスクールカーストを扱うのは、相当難しい。
ぶっちゃけ、人気のある「弱キャラ友崎くん」でさえ、スクールカーストの扱いはちょっと微妙。
あまり納得感のある感じでは扱えていないし、スクールカーストのむなしささえ描かれていない。
さらに他の作品は、小説の演出でしかなくてスクールカーストを真正面から描こうともしていません。

「俺ガイルでウケてたから真似してみた」感が強すぎる。

他の②~④もそうです。
②なんて、どの作品も食い足りなさすぎて、、、、
ちょい俺ガイルのネタバレします。

俺ガイルでは、個人的にすごい!と思ったのは、

1)比企谷の海老名さんへの偽告白
2)生徒会長選で負けたいと言っていた一色に、比企谷が一色をその気にさせて生徒会長にさせたこと
3)交通事故(1巻)を持ち出して、比企谷が雪ノ下母にプロム開催を認めさせたこと(13巻)

の3つです。
文化祭実行委員会の「人」の話や、屋上での「誰も傷つかない世界の完成だ」は入っていません。
そこらへんが好きな方は、ごめん笑。

特に1)はショックで、私が俺ガイルに入り込んだきっかけのエピソードです。
そんなやり方があるのか。
そして、それを見た雪ノ下と由比ヶ浜の反応がものすごく心に残ったし、海老名さんとの京都駅屋上でのやりとりもカッコいい上に、ちょっと哀しくてやられました。

このレベルのななめ上解決は、推理小説を数百冊は読んでいる私でもなかなかありません。
なのに、他の青春系ラノベ作品で、安易にそれを模倣しようというのは無理があります。
友崎くんにしろ、他の作品(例えば「ろしでれ」)にしろ、ななめ上解決を志向しているけれど、「あ、そう」レベルに収まっています。

俺ガイルのななめ上解決が別格なのは、雪ノ下や由比ヶ浜の比企谷への好感度をさりげなく徐々にアップさせておいて、それを傷つけるような比企谷の行動を描いているからです。
つまり、ロジックだけが意外なわけではなくて、読者の心を誘導しておいて、その誘導ごと正反対に落とす。
そこが凄いのであって、単純にロジカルな点が意外なだけではないのです。

これは、実は推理小説にも言えます。
古今東西の超名作と言われる作品は、文章で読者にキャラクターやストーリーに思い入れを作ります。
そして、その思い入れごとひっくり返して意外な解決を導きます。
だから驚くのです。
単に数学的な謎を解くだけなら、パズルを解くのと変わりません。
推理小説は小説であり、キャラクターやストーリーを紡ぎます。そして、それが伏線になっているほど、人は驚きます。
俺ガイルは、それがちゃんと分かった物語になっています。

しかし、それに追随した青春系ラブコメは、そこを分かってないことが多いです。
「弱キャラ友崎くん」で言えば、生徒会選挙でクーラーの設置について友崎が考案したのと並行で日南も考えていて、それを選挙の際にアピールするというシーンがありましたが、「へーそれで?」という感想しか持ちませんでした。
非常に小手先の意外な解決です。
あと、友崎がAIスピーカーを使ったアピール方法もすごく安易で、あれをおもしろいと思う人はごく少数でしょう。
両方とも、単にテクニカルな解決であって、読者はその手法に思い入れも何も作れないからです。

ただ、「弱キャラ友崎くん」はまだマシな方で、他のラノベ作品はもっとひどかったりします。
いやいや、その”ななめ上解決”を読まされて、喜ぶ読者とかいるの?みたいな。
ひとりよがりな”ななめ上解決”が多いです。

このように、俺ガイルの要素を模倣している作品が多い青春系ラノベには、ちょっと違和感を感じます。
作者が、読者に受け入れられたいのは分かりますが。
マンガの方が、ずっと多様性がありますよ。
そして、小説だったら、創元推理文庫の「エラリー・クイーンの事件簿1」を読みましょう。
狭い世界で閉じていたラノベが、新しい世界を開くことの一助になると思います。
スポンサーサイト



Secret

TrackBackURL
→http://mostovoi10.blog77.fc2.com/tb.php/1266-739a651a